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タイトル: 三階蔵に関する基礎的研究
その他のタイトル: A Fundamental Study of the Three-Storied Storehouse
著者: 久保, 奈緒子
発行日: 2019/03/21
抄録: 本研究の対象は、江戸時代初期から大正時代末までに建てられた土蔵造り3階建ての蔵(以下、三階蔵と表記する)である。日本の木造建築において3階建ての建物は珍しく、土蔵に限定するとその希少価値は高い。一般的に土蔵は内部の機密性が高く、使用材が劣化しにくい性質をもつ。そのため使用材の風化具合などによる建築年代の特定が難しく、大半の蔵が単室であり平面形が単純であることからも、年代差を知ることが困難であり、土蔵の編年を扱った先行研究は少ない。三階蔵の存在理由に関する議論はこれまで様々に述べられてきたところではあるが、三階蔵は富の象徴である、とするのがこれまで一貫して共有されてきた認識である。その根拠として繰り返し引用されてきたのは、貞享5(1688)年に刊行された井原西鶴の『日本永代蔵』の記述である。「一に俵、二階造り、三階蔵を見渡せば、都に大黒屋といへる分限者有りける。」(佐藤亮一発行 村田穆校柱『新潮日本古典集成 日本永代蔵』(新潮社、1977))という言い回しは、「三階蔵」という表現を用いた最古のものとされている。伊藤鄭爾氏が『中世住居史』で三階蔵の発生を天正-慶長年間(1573-1615年)であると述べたことをはじめ、三階蔵と禁令との関わりも一つの視点として、絵画史料や町触などの文書を基に、建築史や美術史などさまざまな分野の研究者によって考察されてきた。本研究では、これまであまり着手されてこなかった現存する三階蔵の調査を通して、三階蔵の構造や意匠、使用目的などを比較考察し、その特徴や傾向を明らかにすることを目的とする。また建築年代や建築の背景など詳細が不明な三階蔵に関して、他の例との比較を通して、未解決であった点を明らかにすることも目的に含む。この三階蔵の変遷に関する研究成果は他の平屋・2階建て土蔵にも応用できる可能性があると考える。本研究は6章によって構成される。本論に入る前に、第1章の序論では、本研究の背景と目的、研究方法について述べている。本論は2章から5章で構成される。第2章では、土蔵および三階蔵の発生、三階蔵に関する先行研究の状況について述べ、それを踏まえた上で、本稿が三階蔵の研究を通して目指すところを述べた。第3章では、現地調査を実施、あるいは考察に必要な資料を入手することができた三階蔵を中心に、江戸時代から大正時代に建てられた事例及び建築年代不明の事例、合わせて34棟の三階蔵について、個別にみられる特徴を詳述し考察をおこなった。なお、実測調査を行い実測図を作成した事例はこのうち13棟、すでに実測調査等が行われており考察に必要な資料を入手することができた事例が21棟である。第4章では、第3章で個別に詳述した三階蔵について、規模や開口部、小屋組み、床組みなど、土蔵に共通する構造について比較考察を行い、独立柱や増築の痕跡についてもこの章で考察をおこなった。町場に残る三階蔵については防火に対する備えが開口部の開き扉の仕様に表れていたほか、積雪の多い地域では蔵前や壁の仕上げなどに一定の傾向が見られた。第5章では、第3章および第4章で構造について考察を行った三階蔵を中心に現在の維持管理や活用の状況について述べ、歴史的な建築物としての三階蔵の、今後の在り方について文化財の法整備の側面も踏まえながら述べた。所有者が個人か行政か、また文化財の指定・登録の有無によって異なる活用の形があることを踏まえて、研究機関が歴史的な建築物の保存と活用に関わることも一つの方法であると実例を挙げて述べた。第6章は終章であり、各章のまとめと、本研究の総括を行っている。全国に残る三階蔵について現地調査や既存の調査資料の入手などを通して、これまで三階蔵に関する基礎的な研究を行ってきた。現存する三階蔵の事例を積み重ねる中で、当初から3階建てであったわけでなく、増築によって3階建てになった蔵も見られた。増築による三階蔵の存在は、先行研究で述べられてきたように「富の象徴」としての三階蔵という建築物の特徴と併せて建築・増築の背景についても伝えることが、歴史的な建築物を後世に語り継いでいく上で重要であることを、活用の実践例を基に述べた。本研究の成果は、土蔵や、民家における多層階建築の特徴について知るための基礎資料、また民家建築の活用の一手法の手がかりとなり得ると思われる。
内容記述: 人文課第36号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201k108
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/496
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